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長生きの国を行く | ||
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01世界の長生き地帯
スエーデンの平均寿命は七十五才
北欧のスエーデンでクリスマスをすまし、ストックホルムから飛行機に乗って発つことになった。吹雪だったのでこんな日には飛行機も出まいと思って、電話で聞いてみた。ところが出るという。それからストックホルムの郊外からだいぶ離れているブロンマという飛行場まで行った。
そうして、きょうは出るそうだが、定時に出るのかと念をおしたところ、出るという。すぐ乗れというのだ。乗ったが雪はまださかんに降っている。窓から見ると、私の飛行機の翼の上には五寸も雪が積っているではないか。これで飛んだらたいへんだ、えらいことになった、と思っていると、時間どおりに飛行機は動きだした。さあどうなることか。飛行機はやがて飛行楊の端にある格納庫に入った。大きなドアが締まった。なにをするかと不安だったが、何人かが出てきて、翼の上に乗りホースの水で雪を流してから、今度は大きなタオルのようなもので機体をきれいに拭いてしまった。エンジンをかけたまましばらく、雪が小止みになるのを待っていたが、格納庫の扉がさっと開いた。と、降り積んだ雪の上を滑走しだした。あたりは白一色だ。ときどき雪雲がサッサッと流れ、飛び上りたらしい。一、二分たった頃もう私の乗りた飛行機は雲の上に出た。そこは天気晴朗、空は青く、太陽はさんさんと輝いでいるではないか。……無事に飛んでいることがわかってほっとしたのだった。そして、夭空から、いままでいた地上のことを振返ってみたのである。
この下には何百メートル、何千メートルという雪雲に被われ海の水まで凍っている国があるのだ。そこには、ほとんど一年の半分以上も、陽の目を見ないで、何十万、いや何百万もの人たちが住んでいるのだ。このようなところにいる人たちは、何と悪い生活環境にあることか、日光も乏しく、植物も育ちがわるいのだし、……したがって不健康だろうと考えられるのである。
ところが、あにはからんや、スエーデンやノルウエイ、オランダというこの北欧の国々は世界でいちばん体格がよく、長生きの記録をもっている。平均寿命も現在は七十二、三才にも達している。(今年は世界最長命国はオランダで、女七十三才、男七十一才)やがて七十五才にもなろうとしている。
わが国は寿命が延びているといっても六十五、六才では積極的に寿命が伸びたとはいえない。それは要するに、乳幼児の死亡や青少年の結核や老人の肺炎などが減ったということで、主としてばい菌による病気(伝染病)が薬によってやっつけられるようになって減ったためのことや」、消極的に病気が減ったというのに過ぎないのである。実際は、七十才以上に二年でも三年でも寿命を延ばすということは、非常にむずかしいことであって、日本ではこの数年来、寿命の延長は足踏みをして(男六十三才、女六十七才ぐらい)いるのをみてもわかるであろう。つまり七十才以上にならなければ、積極的に寿命が延びていることにはならないのである。