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02健康と長寿
見直された東洋の学問
こんなことがら、『人生と健康』とか『長生きと幸福』といった題の書物が、店頭に見かけられた。また″生命的″といわれる東洋の古典や宗教書も、いろいろ出ている。ニューヨークのプレンターノ書房には、東洋古典の翻訳がずらりと並んでいたが、ドイツの大きな町では、禅や孔子・老子・荘子のものが、ヤスパースの哲学入門とともに、新書版として駅売りされていた。今ドイツでは国を挙げて生産に邁進しているのだが、駅売りの本にまでこのように"人生と幸福″が追求されているのかと思われて、ちょっと驚いたのだった。だが、あの激しい勤労の意欲の原動力は、遂にそんなところにあるのかも知れない。
また、人類と人類とが無駄な殺し合いをやったあとには、人の生命の惜しまれるのは当然であろう。
それから何といっても、東洋もの、いや日本もので流行しているのは、柔道である。禅は現在のようにばらばらになった行きすぎの分析を統一する原題として問題になっているようである。ここに真剣な″生命の原理″をもとめようとしていることが見られる。これは鈴木大拙博士の書物の影響が大きいのであるが、彼らの生活がそれを要求しているからであろうと思われる。
アメリカでもカナダでも、若い学者や学生の間で研究されている。先般ロスアンゼルスで客死した長谷川三郎画伯など、そこの画学校で、禅と東洋美術を講じていたのだが、好評だったそうだ。
またお茶やお花も、あちらの若い男女が、日本人の先生について熱心にやっているのをあちらこちらでみた。留学生の若い妻君など、かなりの弟子をとって、生計が立つという人もある。
それから柔道は、欧米のどこでも大はやり、「ジュウドウ・指南」の広告はいたるところでみられた。パリやローマはいわずもがな、キューバのハバナ市のキャビトル(国会議事堂)の中には、柔道揚が二、三カ所あって、若い男女が柔道着をつけてさかんにけいこしていた。独裁者の国の議事堂らしい光景であったが、とにかく柔道によって日本は認識されているともいえるほどの大流行である。これは、ドイツの哲学者オイゲン・エリゲルの『弓と禅』という名著でも述べられているように、東洋的・日本的なものは決して、空理空論のものではなく、実際的なところがまず関心をひいているようだ。そして、護身術としても、健康法としても、合理
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