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04恵み溢れる国々
見直されたインカの生活法
南米へ入るとペルーを中心にむかしインカという文化国があった。これもこのごろ「石の文化」として知られ、その遺跡がのこされている。またその社会のつくり方や生活の仕方というものもすぐれていることがわかり、最近アメリカでも見直されて驚異の的になっている。
インカでは国民がつまり年齢に応じて、適当な仕事をするということが厳重に実行され、社会の秩序と個人の健康がまもられていた。
たとえば十八才までは軽労仂、それからは次第に重労仂をする。二十五才になると結婚して家長となり、納税の義務を果し、五十才からは隠居して悠々と余生を送るといった合理的な行き方である。現代生活が機械化され、人間の適性や健康を無視して勝手に目まぐるしく動いてゆく近代生活にとって、それは大きなサゼッションを与えているのである。
インカの生活というものは非常に文化的な社会方式をとり、経済生活の面でも現在学ぶべき点が多いのである。このインカ国は、何千年とつづいて一五三三年にスぺインに滅ぼされてしまった。それほどの文化国がなぜ滅び去ったかというと、よく冗談半分にインカ民族は古い文化を作ったけれども、馬にのっている人間を一つの生きものだと思ったほどのろまだったからだなどといわれたのだったが、実はそうではなくて、人間の健康と幸福についてはひじょうに優れた文化をもち、現在からみてもすばらしい方式をとっていたことがわかってきたのである。
そこで文化とか文明とはなんであるかと考えてみると、滅ぼしたものが必らずしも文化が優れていたのではない。この場合もスペインが文化的に勝っていたからインカを滅ぼし、南米を征服したのではなくて、遂に文化の敵である暴力が文化を滅ぼしたのである。