cover | ||
長生きの国を行く | ||
contents | お買い求めはコチラ |
06欧米の赤線実見記
バーは女との取引場所
日本でもやがて赤線地域がなくなることになったが、これで売春がなくなるとは考えられない。どんな形になってゆくか、それはいわゆる欧米の先進国を見れば見当はつくであろう。アメリカその他では″フォーン・ガール″というのがある。またパリやロンドンのように″ストリート・ガール″が出まわる、といったことも考えられるのである。とにかく売娼という社会の裏面が表に出てくるのは、それが人間の動物性本能と結びついているからには、ただ赤線を無くしただけでは、どこかの面に現われてくると思われる。
アメリカの大都市あたりでは、赤線はないが、町中にひろがって、電話でよべばすぐに来る、という形になっているが、またバーというものが赤線ならざる赤点としてばらまかれている。これは世界的傾向であって、パリでも、バーというものは、そこに女が集りて巣喰っていて、そこでは堂々と取引する場所になっている。もっとも酒だけの″純粋バー″というのもある。また菓子だけ食べるコンフェクショナリーや、食事だけするレストランというとこがちゃんとあって、子供づれでも安心してはいれる。喫茶店(カフェ)はみな"純粋"である。日本ではお茶をのみにいったら、純粋でなかったりすることもあって面喰うこともある。
とにかく欧米では、ふつうバーというのはそういうところである。中南米あたりでは、バーとともにキャバレーが取引所として利用されているようだ。この点は中南米のラテン・アメリカ系統の国やスぺインは先進国かも知れない。キューバのハバナでバーヘ行ったら、いきなり女が寄ってきて、大きなお乳をおしつけて(スぺイン系の女は前にもいったようにお乳と腰はゴムマリのようによく張り切っている)後の部屋へ行こうという。「酒を飲みに来たのだから」というと、「ではあとでね」というわけでそばにつきっきりのサービスである。こんなわけで、バーとは女を買うところになっている。また暑い国では、夕風が立つ頃になると、大通りを貴婦人みたいに着飾ったのが出張ってきて往ったり来たりする。家庭婦人でレクリエーションのついでに相手をさがすというのもあるそうだが、たいていは商売女である。ここに住んでる人なら、商売女と家庭婦人のそれとはすぐにわかるという。
アメリカは、さすがに能率の国であって、流してるのはあまりいない。テレフォーンという文明の利器を使って事務的にやっている。しかし、近代機構の中に登録されないもぐり(どっちみちもぐりだが)も、あるのである。たとえば、ロスアンゼルスやシカゴあたりの場末のバーにゆくと、日本の戦争花嫁のなれの果てや女学生みたいなのが副業にやっているのもある。これは仕方なくてやっているのだが、自分から志望しているのもあるという。
「私、××大学を出て、ここで勉強しているのです。もう五年になります」というのもあったりする。苦学して大変だろうと思うのだが、考えてみると、こんなところで午後から夜中まで毎日切いているのでは、いつ学校へゆくのが、何を勉強しているのかといいたくなる。そして、学校に籍をおいてはいても、売春婦ではないか、そういうことをしてまで、こんなところで学生生活をしなければならないとはどうしたことか、外国へ留学したといえば、もてはやす日本の現状を考えなおす必要があるのではないか。