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04恵み溢れる国々
砂糖壷の国
キューバはメキシコ湾の中にある島の国、マンボやチャッ・チャッ・チャッ―の″原産地″、常夏の砂糖きびの国として知られている。一四九二年に、コロンブスが近くのバハマ諸島へついたのが「アメリカ発見」で、十月十二日の、その記念日に私はちょうどここにいた。面積は日本の本州の約半分、人口は約六百万、砂糖の産額は世界第一、″砂糖壷の国″ともよばれはれている。
島の大部分が高原平野で、気候その他の条件もジャワに似ている。空からみても砂糖きびの畑が広くつずいている。行って見ると、砂糖きびは高さといい、太さといい、すばらしく繁茂している。日光はさんさんと照りつけ、湿気も多くて植物の生育にはもってこいだ。たいした努力をしないで放っておいてもとにかく時を稼ぎさえすれは、太陽のエネルギーをぞん分に吸収して、ひとりでに砂糖がどんどんつくられてゆく自然の大工場だ。
そうして一人当りの輸出額は、アメリカの三倍というのだからたいしたものだ。日本にも昨年一年でたしか六百万トン輪出したという。トン当り八〇ドルとかいうが、それにしても大きな金額(年に五千万ドル)である。しかもこれは全体の一〇パーセントにも当らないという。キューバの砂糖はひじょうに安く、ジャワの砂糖の半値くらいだそうで、鷲くほど安い。だからその安い砂糖がちかいアメリカに入ったのではアメリカの市場をかき乱すことになる。何とか高くしてバランスをとる必要があるというので、(アメリカのいたる所の港々には日本の大きな新造船が二、三隻はかならずきている)とにかくその砂糖を船に積んミあちらこちらと中米や南米などを持ちまわることもあるそうだ。そしてこの中間貿易によって、日本はひじょうにドルを稼いでいるのだとも聞いた。こうだとするとキューバ様々というわけである。またキューバからいえば日本はお得意様なのである。これほど日本とキューバとは、深い関係にあるのである。が、まだ条約なども完全に結ばれていないし、私の行った年の秋には、わずかに代理公使がいるだけであった。