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10新しい医学の結論
現代病とストレス
欧米の文明諸国では、伝染病はほとんどなくなり、結核さえも、ほとんど問題にならないほどに少くなっている。もちろん赤痢などは全然ない。欧米の病院で″伝染病室″とあるので、よく見ると、中には″鉄の肺″が並んでいたりして、全部といってよいほど小児麻痺の患者ばかりである。これは、いろいろな新薬によって、ばい菌をやっつけることができるようになったからである。その結果、文明国ではどこでも平均の寿命がぐりと延びたのであって、日本でも、戦前の「四十五」から現在の「六十五」にまで長生きになった。
ところが、脳出血や心臓病で倒れる人が日ましに多くなり、動脈硬化や高血圧症、関節リュウマチや神経痛、あるいはノイローゼなどで悩む者が、どこでも多くなっている。これらの病気は、ひっくるめて″現代病″とよばれるもので、これがなぜおこるか、原因は今までの医学ではわからなかったが、それのおこる道筋を、実験によってはっきり示したのが、カナダのH・セリエ博士である。
私は昨年十月末に、秋深いモントリオール大学にセリエ博士を訪ねて、そのストレス研究の実験所を見学した。近代設備をほこる豪華な構えである。博士と新しい医学の動向について語り、東洋医学に対するその卓越した見解を聞いて感激したのだった。
博士は「肩がこる、腰が痛い、食欲がない、体がだるい、元気がない……」という、誰もが経験するどの病気とも共通な、ありふれた症状をつきとめようとして、偶然の実験から、それが体内のホルモン・バランスの乱れに由来するものであり、また、そのホルモンの乱れは体にうけた傷や暑さ寒さ、飢えや食べすぎ、過労、中毒や感染などの肉体的刺激、あるいは、恐怖・不安・心労などの精神的刺激によって、まったく同様に、ひきおこされることを証明した。
そしてまた、このような肉体的、精神的な刺激による変調(ストレス)が長くつづくと、リュウマチ・神経痛・胃潰瘍・心臓障害・動脈硬化がおこり、ついでは脳出血や心臓病で倒れることを明らかにした。さらに、ホルモンの調和の主軸を司るものは、″脳下垂体と副腎″であることを見出し、また″副腎皮質のホルモン″が健康の鍵をにぎることを示した。このストレスの研究は、医学に大きな貢献(革命)をもたらし、健康や長寿に対して、はっきりした拠りどころを持つようになった。